―――貴社のミャンマー事務所の開設はいつですか。
オペレーションが開始されたのは、2014年の4月からですので現在4年目に入ったところですね。
現在は、日本人スタッフ3名とミャンマー人スタッフ19名で運営しています。
――次に、事業内容を教えてください。
海上輸送、航空輸送、陸上輸送、倉庫業務、通関業務、クロスボーダー(国境間取引)の大きく6つです。
郵船ロジスティクスは、世界43ヵ国、500拠点以上の広いネットワークを持つ総合物流業社です。我々はそのミャンマー法人となります。
今申し上げた業務に加えて、ティラワに新しく構えましたロジスティクスセンターの業務開始に向け、目下準備を進めているところですね。
――その中で野嶋さんが特に力を入れている業務は何でしょうか。
弊社だけのためではありませんが、通関業の電子化が進むことを期待しています。
2016年11月に、日本の通関システムをベースにして作られた新たな電子通関システムのMACCS(Myanmar Automated Cargo Clearance System) が、ヤンゴン国際空港、ヤンゴン本庁、ヤンゴン本港、ティラワ港、ティラワ経済特別区内の税関へ導入されました。
このシステムは輸出入の申告、審査、関税納付、認可を含む一連の通関手続きを電子化し商業省の発給する輸出入ライセンスとの連結することが出来ます。このシステムがスピード感をもってタイ国境のミャワディ税関など全国展開することを期待しています。
しかしまだ始まったばかりですので、問題点を解決しながらの全国展開となりますが、
このミャンマーという国が物流分野で、先進国と肩を並べられるようになるため、システム面はグローバルスタンダードに早急に近づいて欲しいと思っています。
―――現時点でのMACCSの状況はいかがですか。
何事も、ステップバイステップですよ(笑)
確実に良い方向には向いていますが、まだまだやるべきことは多いですね。
MACCSが早く浸透し、輸出入の施設の増設や物流システムが確立されることで、ミャンマーは国としても大きく発展していくことができると思います。
これからも継続して、業界をあげて、1つ1つ解決していけたらと思っています。
―――野嶋さんはミャンマー以外の国での勤務も経験されていると伺っておりますが、他国とミャンマーでは、仕事をする上でどういう違いがありますか。
日本では東京、浜松、沼津、大阪の4都市で勤務、海外はアメリカ駐在2回、香港駐在1回。大阪からミャンマーに赴任しました。
ミャンマーへ来る以前に赴任していた国では、どこでも、組織や物流システムが整備されていて、顧客もそれなりに確保できていました。それゆえ、いかにサービスの向上・充実を図るかが仕事の大きな柱でした。
しかし、ここミャンマーでは、輸出が少ないことや組織自体が出来上がったばかりで
会社としての組織作り、スタッフの教育等、サービスを展開するにあたっての基盤作りを
より一層進めなければならなかったという点ですね。
―――環境面での違いを仰っていただきましたが、人材という面ではいかがですか。
物流業だけでなく社会全体として、これから発展していく国であるため、まだまだこれからという印象です。
物流業に関しては知識や経験を持つ人材が少ないので、教育を受けさせる(教えてあげる)
ことが大切だと思っています。
43カ国にネットワークを持つ我社の仕事内容を理解できれば、しっかり働いてくれる子は多いと思います。
―――冒頭でお話になられたティラワのロジスティクスセンターについても教えてください。
建設中の多目的物流施設も5月末には完成し、6月から業務開始出来ます。
2017年7月12日 ティラワロジスティクスセンターの開業式を行います。今は慌ただしく、そのオープニングセレモニーの準備を進めています(笑)
このセンターの業務としては、保税・非保税貨物の取り扱いや輸出入の通関手続き、トラック輸送/コンテナドレージ、クロスボーダーの物流基地など多岐に渡ります。
敷地面積30,096㎡、建物面積 6,208㎡、オフィススペース(2階)660㎡です。
この1階部分には、冷蔵(5℃~8℃)、冷凍(-18℃~-20℃)定温(15℃~20℃)の施設を設置し、常温倉庫部分と合わせて4温倉庫を揃えることで、幅広いニーズに対応できます。
また、4000㎡の完成車蔵置用ヤードも完備し、一般および保税車輛保管、完成車の納品前点検・補修・部品補給サービス、通関手続きなど完成車物流サービスにも力を入れていきます。
期待の大きい自動車産業でのミャンマー国のニーズにも応えられるのではないかと思います。
――先ほど、現在のスタッフ数について教えて頂きましたが、最大で何名のスタッフが働けるのでしょうか。
また難しい質問ですね(笑)
実は最大何人というのは決められないんです。というのも取り扱う業務内容によって、その倉庫の使い方自体が変わってくるからです。
一般倉庫として貨物を置くだけなら、人員はさほど必要になりませんが、保税倉庫として貨物を保管したり、顧客のニーズにあわせて、センター内で物流加工を請け負う場合には、一般倉庫より多くの人員が必要になってきます。
取り扱う用途によって必要人員が変わるため、最大何人とは申し上げにくいですね。需要に沿って、その都度人員を増やしていく形をとるつもりです。
センター自体は10人以下でスタートしますが、これから50人、100人と増やしていけたらすばらしいと思います。
――今後の貴社の展望を教えてください。
まずは、ティラワのロジスティクスセンターがしっかりと機能を果たしてくれることが第一ですね。センターが安定し、ミャンマーの産業自体も、電子部品や自動車、オートバイなどのハイテク製造メーカーが生産拠点として進出して来ますと、その部材や製品の輸入、輸出が活発化します。こういう輸出入貨物が取扱い出来るようになったら嬉しいですね。
もう1つ、国境面でのクロスボーダー取引についても注目しています。まずは、輸出入が多いタイですね。国境付近のミャワディでは、国境を超える際に、その都度コンテナの中身を積み替えなくても良い、スルーコンテナでの保税運送の実現化に期待しています。
既にミャンマーとタイの2国間で合意されており、2017年中にはテスト輸送が行われる予定です。
タイの援助で第2友好橋が建設中であり2018年4月頃には開通予定です。開通時期に合わせてスルーコンテナでの保税輸送が実現することを期待しています。
先ほども申し上げましたが、国自体の発展に物流は不可欠なものですので、ミャンマーの物流業界がグローバルスタンダードに近づいていけるようお手伝いさせて頂きたいと思っています。
――野嶋さんの私生活についてもお聞きします。休日はどんな過ごされ方をしていますか。
もっぱらゴルフですね。(笑)
あとは、家でゆっくり休む日やショッピングセンターに買い物に出かける日もありますが、やはりゴルフが多いです。(笑)
――ゴルフの環境面についてはどうですか。
ヤンゴンには我々が主にプレーするゴルフ場が4つあります。
乾季の間は、どこも概ね良好で問題なくゴルフが楽しめます。しかし、問題は雨季です。雨季はやはりダメで、田んぼのようになってしまうゴルフ場もこの中にあります(笑)。
――金額についてはいかがですか。
日本よりは価格は安いです。キャディーさんもついてくれるし、日本より安くプレイもできるから毎週行くことができるんです。(笑)
――食事についてはいかがですか。
思っていた程、不自由していません。というのも、ミャンマー人オーナー・日本人オーナー問わず、美味しい日本食を提供してくれる日本料理店がたくさんあるからです。
単身赴任者としてミャンマーへ来ましたので、食については少々心配でしたが、その点は全く問題ありませんでした。
また、タイ・インド・中華・韓国料理店・イタリアン・ドイツ料理など他国料理のレストランもたくさんあるため、他の方々も食で困ることは、ほとんどないと思います。
――ミャンマー料理は召し上がりますか。
道端にある屋台に行ったことはありませんが、ミャンマー料理は好きです。シャン料理のシャンヨーヤーや家から近いハウスオブメモリーズも利用しています。
――最後にミャンマーが国として今後発展していくために、必要なことは何でしょうか。
ここからの5年~10年が勝負だと思っています。10年でインフラ、特に交通と電気の整備が進めば、お隣のタイのように、大きく国として成長できると思います。今の状況を見るとかなりスローペースなので、少し不安ですが。(笑)
また、少しずつローテク産業中心の社会を脱却していく必要もあるかと思います。ハイテク産業を増やし、日本をはじめとする先進国のハイテク産業の製造拠点になり、「ものづくり」ができる国になっていけるかが、今後のカギになってくるのではないかと思います。
弊社としてはミャンマーがそのように発展していけるよう物流を通じてお手伝いが出来ればと思っています。