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  • 7年前、単身ミャンマーへ渡り、以来現地に身を置き激動の時代を生き抜く。企業・政府・マスコミ等との長年に渡るビジネスを通して培ったスキルや現地・日本の人脈をフルに活かした調査・進出コンサルティングは在ミャンマー日本人の中でも随一である。 Since 2001/1/1
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 知られざる農村商法 小口融資で村人は何を始めたのか


 ミャンマーで、農村部や貧困層の人たちに無担保で融資を行うマイクロファイナンス機関が急増している。これまで金融アクセスのなかった農村部の人たちは、融資を得てどんな商売をしているのか。ミャンマーの農村ではどのような需要に対して、どのような商売が成り立っているのかは、あまり知られていない。ヤンゴンビジネス最新事情の第2回では、マイクロファイナンスの活動を通じて、ヤンゴンなど都市部とはまるで違うミャンマーの農村部でのビジネスに迫る。


( ヤンゴン在住ジャーナリスト、北角裕樹 )

明るく加工をお願いします 定期ミーティングに参加するマイクロファイナンス利用者

増えるマイクロファイナンス機関

ヤンゴンのダウンタウンから渡し船でヤンゴン川を越え、対岸のダラにわたると風景が一変する。都会の喧騒は消え、草ぶき屋根も珍しくない田園風景が現れる。ここからさらにタクシーで1時間ほど行くと、日系マイクロファイナンス機関のMJIエンタープライズが事業を行うコームー郡区にたどり着く。村というより、道路沿いに家や商店が点在しているだけで、ほとんどの場所では畑が広がっている。

マイクロファイナンス機関は、こうした村々で100ドル~200ドル程度の小口の融資を行う。農民らはそれを元手に商材を仕入れて販売したり、家畜を買い入れて大きく育てたりする。その儲けから、利子と元本を返していく仕組みだ。ミャンマーでは、テインセイン政権下の2011年にマイクロファイナンスが法制化された。企業と非営利組織(NPO)などに事業が認められて、事業者が急増。政府の調査では、2016年の時点で167のマイクロファイナンス機関がライセンスを取得している。

MJIでは週1回、利用者らがミーティングを開き、そこで貸付金の返済を行う。こうした会合があるため、返済が滞れば村の中ですぐに知れ渡ってしまう。また、利用者同士で互いに連帯責任契約を結ぶグループローンの形をとることで、貸付金が焦げ付くことはまずないという。


ツケで販売する行商人

利用者のひとり、ミンミントゥエさん(45)は、タイまで出かけ、洗剤などを買って帰る行商をしている。「タイの洗剤はとても人気がある。高いけどよく売れるわ」と話す。月2~3回、陸路でタイ国境のミャワディを通ってタイに入り、商材を買い込む。タイで1200チャット(約100円)程度で仕入れた洗剤一袋が、村では1800~2000チャットで売れる。粉せっけせっけんや液体洗剤のほか、柔軟剤もある。農村部のミャンマー人は通常、手洗いで洗濯を行うが、柔軟剤を入れることで香りがよくなると評判だという。このほか布や衣料も販売する。1回の行商で、約50万チャット(約4万円)分を仕入れ、売り上げは70万チャット程度になるという。自己資金に加え、マイクロファイナンスからの借り入れを仕入れの原資にしている。

特徴的なのは、現金社会のミャンマーでありながら、村人を相手に「ツケ」で商売をしていることだ。帳簿に誰が何を購入したか記録して、たまたま顔を合わせた時や、自宅を訪問した際などに「そろそろ払って」と催促し代金を回収する。それも、一度に全額を回収するのではなく、500チャット(約40円)や1000チャットずつなど現金の持ち合わせがある範囲で払ってもらうという。事情通によると、農村部ではこうしたツケでの商いがしばしばみられるという。不特定多数を相手にするのではなく、濃厚な人間関係の中で知人らに商品を販売するため、とりっぱぐれるリスクは低い。また、村に競合がほとんどいないことも、安定的な取引を可能にしている。

明るく加工をお願いします ミンミントゥエさんは顧客のツケを帳簿で記録している

敬意を払われるマイクロファイナンス

こうした「コミュニティ」は農村ビジネスを理解するカギのひとつと言えそうだ。例えば、MJIの利用者のミーティングは、融資をする側のマイクロファイナンス職員が訪れるのを利用者が整列して迎え、あいさつをすることで始まる。ずらっと並んで職員の説明を聞く様子は、学校の先生と生徒のような関係性を思わせる。

明るく加工をお願いします MJI利用者はマイクロファイナンス職員に礼儀正しく接している

民間の調査によると、ミャンマーのマイクロファイナンス利用者の4割強が行商や露天商など店舗を持たない販売を手掛けている。また、家の軒先を商店にするなど店舗型の商売も3割を超す。ただ、こうした小売業者も農家を兼業しているパターンが多く、農作業を行う傍ら、物品の販売も行うというケースが多い。近年増えているのは、携帯電話のプリペイドカード販売だという。流通業のほかは、零細製造業や畜産業などが多い。

同じ村に住むキンタンウィンさん(57)は、パンやケーキの卸売りを手掛けている。夫が運転する三輪トラックで村々の工房を回り、仕入れた食材を町のパン屋などに販売する。週2回、約60万チャット(約4万8,000円)分の商品を仕入れて販売すると、一回あたり5万チャットの儲けが出るという。25万チャットをマイクロファイナンスで借り入れることで、大規模な仕入れができるようになり、今ではアルバイトも雇えるほどに事業は成長した。

明るく加工をお願いします パンの卸売り事業を行うキンタンウィンさん

7割弱が電気のない生活をするミャンマー

日本企業は、富裕層を対象にしたハイエンドの商品を販売しているケースが多い。しかし、ミャンマーのおよそ7割は農村人口だ。また、人口の7割弱はいまだに国家電力網の電気が届いておらず、自動車用バッテリーやソーラー発電、ケロシンランプなどを使って生活をしている。こうした農村部では、当然ながらヤンゴン市民とは違う消費活動が行われているのだ。5,000万人市場のミャンマーをラストフロンティアとして目指した日本勢の中には、即席めんや飲料など大衆向けの商材を扱う企業も少なくない。こうした企業は早晩、農村の攻略という壁にぶち当たる。農村ビジネスを理解することが壁を乗り越えるために必要になってくるに違いない。


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