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  • 7年前、単身ミャンマーへ渡り、以来現地に身を置き激動の時代を生き抜く。企業・政府・マスコミ等との長年に渡るビジネスを通して培ったスキルや現地・日本の人脈をフルに活かした調査・進出コンサルティングは在ミャンマー日本人の中でも随一である。 Since 2001/1/1
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 インターネット取引の夜明け 〜定着するか?急増するネット取引〜


 数か月前の知識は役に立たないともいわれるほど変化の速いヤンゴン。中でも、急速なスマートフォンの普及によって、インターネット環境は劇的に改善している。 そこで続々と登場しているのが、ネットを経由したeコマースだ。 「初めて手にした携帯電話がスマートフォン」というミャンマー人の間で、どんなビジネスが浸透しているのか、その実態を追った。


[ ヤンゴン在住ジャーナリスト / 北角裕樹 ]

明るく加工をお願いします 街中を自転車颯爽と走るヤンゴンドア2ドアの配送員

自転車でスイスイ配達

ヤンゴンの街角で、わかば色のロゴの大きな荷台の自転車が走ってゆくのを見かけることが多くなった。「ヤンゴンドア2(ツー)ドア」という名の出前サービスの配達員だ。 渋滞が急速に悪化しているヤンゴンでは、食事をするためにちょっと外出するのも一苦労。このため、パーティの際などに配達してくれるこのサービスがヤンゴンっ子に受けているという。
実際にどのように配達しているのか知るため、筆者は同社のアプリを使って注文する実験を行った。 アプリをスマホにインストールしてログインするなどの手間はあるものの、その後はスムーズだ。80軒以上あるという提携レストランから好きなメニューを選択できる。
ヤンゴンの繁華街ナワディ通りにある「パパピザ」のマルガリータピザを選んだ。9500チャット(約760円)の料理の代金に加え、3000チャット(約240円)の配送費がかかる。 アプリには、配達員が店に到着したことなどが表示されるので安心だ。約30分ほどで配達員が到着。代金はその場で配達員に手渡す仕組みだ。予想到達時間よりも30分以上早く、まだピザは暖かかかった。

明るく加工をお願いします まだ暖かいピザが届いた

拡大する中間層が支持

創業者のエジプト出身のシャディ・ラマダン社長は「開始して2年は90%が外国人だったが、ミャンマー人の利用者が増え、現在は半々になった。 急速に拡大する中間層が主な顧客です」と力をこめる。「新しいものが好きなミャンマー人がサービスを試してくれている。そして、一度試したらその便利さが実感できる」という。 ヤンゴンドア2ドアは2013年にサービスを開始。一年前には一日40件だった注文数が、現在は150~180件程度に急増した。インターネット経由の予約が多いが、スマホアプリを使った注文する顧客が増えている。
ミャンマーのネット通販では、物流が未熟なことが大きな壁だと指摘されている。これに対し同社は交通規制の厳しいヤンゴンで一般的でなかった自転車を活用することで、風穴を開けた。 「私がビジネスを始めたころは、ヤンゴンにはほとんど自転車に乗る人はいなかった」というラマダン社長は振り返る。同社長の説明によると、 ヤンゴン中心部ではオートバイの乗り入れが全面的に禁止されている一方で、自転車については道路ごとに規制があり、通行できる道路とできない道路があるという。 同社では自転車が禁止されている通りを避けることや、安全に通行する方法などを徹底して教育する。ヘルメット着用も義務付けている。社員には自転車競技のミャンマー代表選手も在籍している。

明るく加工をお願いします 渋滞のひどいヤンゴンでも自転車なら間をすり抜けていける

配送サービスにかかる数千チャットの配送代金は、ミャンマー人の所得水準からすると割高感もあるが、ラマダン社長は所得水準が向上していることから需要は十分あるとみる。 ミャンマー人利用者からは「外食をしよう思ってもタクシー代がかかる。それなら配達してもらっても変わらない」という声も聞かれる。
同様に、ネットサービスではタクシーの配車サービスの「オーウェイライド」も利用者を拡大している。こちらも、外資系企業に勤める大卒の若者など、スマートフォンを使いこなす新興の中間層が主な支持層だ。


来るか、キャズム越え

今のところ、こうしたサービスは珍しいものが好きな「アーリーアダプター層」が利用しているとみられ、今後定着するかどうかが焦点だ。システム開発のアクロクエスト・ミャンマー・テクノロジーの寺田大典支店長は「先端技術が普及する際には新しいものを積極的に試す人だけでなく、 一般の人が使うようになる普及率が16%程度のキャズム(溝)を超えられるかがカギになる。 ヤンゴンドア2ドアなど人気サービスはこの1~2年でキャズムを超えてくるのではないか」と指摘する。
一方で、消費者や関係者が不慣れなことなどから、運用の難しさを指摘する声も大きい。2014年に開始したバス予約アプリ「スターチケット」は、長距離バスのチケットをコンビニエンスストアで受け取れるというミャンマーでは革新的なサービスだった。 創業者は米経済雑誌にミャンマーを代表する若手起業家として取り上げられた。 しかし、筆者がアプリで予約したチケットを受け取るため、ダウンタウンのコンビニエンスストアを訪ねたところ「使い方がわかる人がいない。明日来て」「今ネットの調子が悪くてつながらない」などで訪れた6軒のコンビニすべてで利用できなかった。 しばらくするうち、コンビニの店頭から広告が消えていた。

明るく加工をお願いします サービスがミャンマーの消費者に定着するかが次の課題だ

寺田支店長は「ミャンマーでは、サービスの運用や関係者の教育、使い方の広報などに膨大な経費がかかる」と説明する。通信費が高くアプリをダウンロードすることを嫌がるため、 ショッピングセンターなどでアプリのインストールイベントを開催する企業も多く、こうしたコストも重くのしかかる。こうした出費に耐えて生き残ることができるサービスはごく限られたものになる可能性が大きい。


まだ見えぬ勝者

今後もミャンマーのネットサービスをめぐる環境は急激に変わっていくことは間違いない。すでに通信大手のテレノールはヨマ銀行と組んで電子マネー事業に乗り出しているし、最大手のミャンマー郵電(MPT)も今年中に参入する構えだ。また、JCBや中国の銀聯カードは、地元銀行と提携して利用者を増やしている。 これらが普及すれば、決済面で状況が大きく改善するだろう。ある外資系金融機関の駐在員は「eコマースの中でも、音楽やアプリなどの物流が必要ない買い物が先行する」と予想する。
インフラは整いつつあるが、肝心のサービスでは「フェイスブック一強」とも言える状態で、多様なサービスやアプリを使いこなすミャンマー人はまだまだ少ない。 将来にわたって支配的なシェアを確立しそうなサービスはまだ見えてこない。ミャンマーのeコマースをめぐる陣取り合戦はこれからだ。


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